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M&A(Mergers and Acquisitions)
役員選任権付株式
ガバナンスパワーの解放:M&Aにおける役員選任権付株式
1. ガバナンスのコントロール:役員および取締役の選任権を持つ株主には、企業内の重要な意思決定プロセスに影響を与える重要なガバナンスコントロールが与えられます。
2. 戦略的アドバンテージ:M&A取引では、このような権利を持つ株式を取得することで、買収者は対象企業のリーダーシップや方向性を形成する能力を提供し、戦略的アドバンテージを得ることができます。
3. 法的影響:役員選任権付株式に関連する法的影響や複雑さを理解することは、M&A取引における買い手と売り手の両方にとって重要です。
M&Aにおける役員選任権付株式
役員選任権付株式とは、当該種類株式総会において取締役や監査役などの役員の選任決議ができる種類株式のことを指しています。当該種類株主総会によらなければ役員の選任を行うことができませんので、委員会設置会社や公開会社においては役員選任権付株式を発行することは認められてはいません。つまり委員会を設置していない非公開会社のみがこの株式を発行することができます。通常取締役や監査役は株主総会で選任しますが、この選任権を特定の株主だけに与えることができるのです。ただし、役員の定数に足りず選任すべき株主も見当たらない場合には、役員選任権は廃止したものとみなされるので留意しておくようにしましょう。また取締役等役員を解任する場合についても、当該種類株主総会の特別決議で決議することができます。
役員選任権付株式のパワー
役員選任権付株式は、企業ガバナンスに影響を与える強力なツールを株主に提供します。これらの株式は通常、取締役会の選挙で候補者に投票したり、企業内の主要な役員ポジションの構成を決定したりする特権と共に提供されます。このような株式を保有することで、投資家やエンティティは組織の方向性と管理に対して重大なコントロールを行使することができます。
M&A取引における戦略的重要性
M&A取引の文脈では、役員選任権付株式は戦略的な重要性を持ちます。これらの株式の大部分を取得することで、買収者は交渉においてレバレッジを得ることができ、対象企業を自らの戦略的目標に沿った方向に導くことができます。たとえば、潜在的な買収者は、買収後の統合プロセスを円滑化するために、または特定の運営上の変更を実施するために、対象企業の取締役会と経営陣のコントロールを取得することを目指すかもしれません。
さらに、役員選任権付株式は、対象企業にとって防衛策として機能する場合もあります。敵対的な買収の試みが発生した場合、既存の経営陣や取締役会は、これらの権利を持つ株式を友好的な投資家やステークホルダーに発行することで、買収企業の影響力を弱めることを目指すかもしれません。
M&Aで事業を売却する場合は?
M&Aの会社売却のケースについてはどうでしょうか。役員選任権付株式を売り手が保有している場合と、役員選任権付株式を買い手が保有している場合とで会社運営のその後が大きく変わってくることになります。M&Aによる会社売却後の経営に与える影響が違ってくるのです。まず役員選任権付株式を売り手が保有している場合なら、売り手側が役員を選任することができますので、後継者が暴走しないようにある程度コントロールすることが可能となります。一方役員選任権付株式を買い手が保有している場合、買い手である後継者側が役員選任権付株式を保有している状態となりますので、たとえ相続によって株式を分散してしまったとしても役員を選任することによって会社の主導権を握ることができるようになります。さらなる留意点として、役員選任権付種類株式を発行する際には株主総会決議を特別に開くことができます。取締役または監査役の数および発行可能種類株式総数、当該種類株主総会にて取締役または監査役を選任することなどを定款に定めておくことができるでしょう。
法的考慮事項と課題
役員選任権付株式は、M&A取引において重要な機会を提供する一方で、法的考慮事項や課題をもたらす可能性もあります。たとえば、このような株式の発行や譲渡に関する規制上の制約や企業ガバナンス規則が存在する場合があります。また、特定の株主が他の株主に比べて不均等な投票権を持つ場合には、利害関係者間での紛争や訴訟が発生する可能性があります。
さらに、役員選任権付株式の取得は、既存の契約や企業規約で規定されている変更管理条項やその他の契約上の義務を引き起こす可能性があります。したがって、M&A取引を進める前に、買い手と売り手の両方がこのような株式の法的影響や影響を十分に評価するための徹底したデューデリジェンスを行うことが重要です。
役員選任権付株式は、企業ガバナンス構造に対する重要な影響力を持ち、M&A取引において重要な役割を果たします。これらの株式の戦略的重要性、法的影響、および潜在的な課題を理解することは、M&A取引に関与するすべての関係者にとって重要です。注意深い検討とデューディリジェンスを通じて、利害関係者はこれらの株式を活用して目標を達成し、M&Aの複雑な環境を効果的に航行することができます。