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M&A(Mergers and Acquisitions)

二項モデル

M&A評価における二項モデルの力を明らかにする

– M&Aにおける二項モデルの理解
– 評価における二項モデルの適用
– 二項モデルの効果を示す実際の例

二項モデルはブラックショールズモデルと並んで代表的なオプション評価方法であり、オプションの権利行使期間を細分化した上で、株価を上昇・下落→上昇・下落→・・・と場合分けをして将来の株価の推移を予測して、現在のオプションの価値を推定する方法のことです。図示する様子が格子状になるため「格子モデル」とか、木の幹が枝葉に分かれていくようにも見えることから「ツリーモデル」とも呼ばれることがあります。M&Aにおいてオプションの価値を図る際には、二項モデルが使用されています。オプションでは原資産の時価と、将来オプションの権利を行使する時の差の部分に価値が生じてきます。ですから、原資産の価格やオプションの行使価格、ボラティリティの変動や利回りの上下、また行使期間の長短などが影響を及ぼす要素となるのです。二項モデルは、専用のソフトウェアで複雑な解析をし、汎用性が高いといわれていますが、ヨーロピアンオプションのように権利行使満期日にのみ行使する場合、比較的簡便に計算ができるブラックショールズモデルが用いられることが多いようです。

二項モデルは、不確実性のある条件下での金融商品や投資機会の価値を評価するための枠組みとして、合併や買収(M&A)の領域で強力なツールとして機能します。これらのモデルは確率理論の原理に基づいており、オプションの価格設定や複雑な金融構造の評価に柔軟なアプローチを提供します。二項モデルの複雑な側面とそのM&A取引への適用を理解することは、価値を最大化し、リスクを軽減するために、取引に参加する買い手や売り手の両方にとって不可欠です。

M&Aにおける二項モデルの理解

二項モデルは、不確実な条件下での金融商品や投資機会の価値を評価するための数学的手法です。M&Aの文脈では、それは主に対象会社の価値を評価し、最適な価格設定や取引構造を決定するために使用されます。このモデルは、基礎となる資産価格が時間の経過とともに一連の離散的な段階で進化し、各段階が可能な結果と関連する確率で特徴付けられるという仮定に基づいています。複数の将来のシナリオをシミュレートし、期待キャッシュフローを現在に割り引くことで、二項モデルは対象会社の公正な価値を見積もり、投資の潜在的なリターンを評価するための包括的な枠組みを提供します。

評価における二項モデルの適用

二項モデルは、M&A評価において、対象会社の公正な市場価値を決定するだけでなく、異なる取引構造や資金調達オプションの影響を評価し、M&A取引に関連する潜在的なリスクとリターンを評価するために幅広く使用されています。これらのモデルを使用することで、不確実性、変動性、タイミングなどの要因を評価に組み込み、より情報量の多い意思決定と戦略的計画が可能となります。ボラティリティ、金利、時間枠などの主要なパラメータを調整することで、アナリストは二項モデルを特定のM&Aシナリオに適用し、各取引に固有の課題や機会に対処することができます。

二項モデルの効果を示す実際の例

実際の例は、M&Aの評価と意思決定における二項モデルの効果を説得力を持って示しています。例えば、企業Yによる企業Xの買収では、二項モデルを用いてシナジーの潜在的な影響を評価し、企業Xの資産の公正な価値を見積もり、最適な価格設定と取引構造を評価しました。さまざまなシナリオや感度分析を取り入れることで、買収企業は株主価値を最大化し、統合リスクを最小限に抑えた有利な取引を交渉することができました。

同様に、企業Aによる事業部門の売却では、二項モデルを使用して、直接売却、分社化、または合弁事業などのさまざまな売却オプションを評価し、株主価値への潜在的な影響を評価しました。十分な分析を行い、さまざまな戦略的選択肢を検討することで、企業Aは最も価値を高める売却戦略を特定し、取引を成功裏に実行し、株主に価値を提供しました。

二項モデルは、M&Aのダイナミックで不確実な環境で企業の価値を評価し、投資機会を評価するための堅牢な枠組みを提供します。二項モデルの原理を理解し、M&A取引に効果的に適用することで、関係者はより情報量の多い意思決定を行い、取引構造を最適化し、価値創造を最大化することができます。実際の例は、M&Aの評価と意思決定プロセスにおける二項モデルの柔軟性と効果を示しています。

M&Aではオプションの価値も検討される

M&Aなどでは、オプションの価値も検討され、その時に使用される二項モデルは、できるだけ区切りを細かく設定することによって、さらに正確な数値に近づくといわれています。しかし、二項モデルを細かく設定するなら複雑さが増しますので、表計算ソフトなどを使用してなるべく簡単に計算することができるブラックショールズモデルと比較すると、計算の煩雑さが増していくことになります。ですから、ブラックショールズモデルを使用することが難しいアメリカンタイプやエキゾチックなどの計算に用いられるケースが多くなってきています。二項モデルでオプション計算をすることによって、オプションを行使するか、継続するかの判断材料を得ることができるのです。日本で発行されているストックオプションのほとんどは、アメリカンタイプのものが多いので、本来二項モデルで計算しなければなりませんが、ブラックショールズモデルが簡便であることや、ストックオプション会計によってブラックショールズモデルで計算しても良いとされていることや、よほど複雑な設計にしなければどちらの方法でも大差がない評価結果が得られるので、ストックオプション評価では、ブラックショールズモデルが用いられることが圧倒的に多いとされています。