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ノートーク条項
ノートーク条項とは何か?
英語で言うところの「No-talk Provisions」、ノートーク条項とは取引保護措置(英語:Deal Protection Measure)の一つです。この措置は、情報提供や競合者との交渉の禁止の義務を課す措置のことを指しています。日本におけるM&Aは、主に戦略的なM&Aであり、市場の中で優位性を得ることを目的としたものです。そして、この種のM&Aは、基本的には友好的な雰囲気の中で話し合いが始まることになります。しかしながら気をつけなければならないのは、他の買収希望者が登場する場合です。他の買収希望者が登場してしまいますと、友好的な雰囲気から競合的な雰囲気に大きく変化してしまう場合があります。M&Aは、交渉開始から株主総会の承認まで数ヶ月の期間を要しますので、その数ヶ月の期間は他の競合的な買収希望者に対する防備が弱い時期でもあります。そこで、この防備の弱い時期に対処し、他の買収希望者の登場を制限し、合併計画実現の確実性を高めて行くために、合併契約書の締結の前に取り交わす基本合意書などに、ノートーク条項、取引保護条項を盛り込むというわけです。
実際のM&A現場での取引保護措置は難しさもある
しかしながら、取引保護条項に関連して、法的な問題点が生じる場合もあるので注意が必要となります。取締役は売却を決めた段階で、株主や会社にとっての最善の利益を優先しなければなりません。仮に代表取締役によって締結された取引保護条項であったとしても、会社や株主の利益を優先するべき状況においては、その既に締結された取引保護条項の拘束力が制限される場合もあり得るのです。それで、もしM&Aの過程で交わされた基本合意書の中に盛り込まれている、ノートーク条項も含む何らかの取引保護条項の効力が、株主の利益を無視したものになっているとすれば、取締役の締結行為における経営判断の妥当性などの会社法的な観点や、契約法的な観点から、法的効力の検討が行われる場合があります。