医療法人設立の流れと認可申請、医療法人設立から法人医院開設までに必要な期間は最短でおおよそ6ヶ月程度です。

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経営コンサルティング

医療法人設立の流れと認可申請

医療法人設立と病院経営は新時代へ

従来、医療法人設立認可申請を行うスキームの代表例は、所得税法の累進課税制度の適用を緩めることによる節税効果を志向するものでした。
しかし、法人設立と同時に適用となる社会保険と保険料負担は、社会保障制度がより一層求められる環境変化と共に年次を追うごとに増大傾向にあり、単に医業経営の負担軽減のために医療法人を設立することにはリスクを伴います。
2000年代以降の医療法では、公益性をキーワードに医療法人経営における法人解散時の残余財産の帰属先が国・地方公共団体または他の医療法人等と規定されたことで、旧法以前に設立された法人の経過措置の将来性も継続した検討課題となっています。
また、従来から指摘されている中小病院経営の厳しさは引き続き顕在化が進み、事業再生のための経営戦略策定から具体的なリストラクチャリング施策・ファイナンスの手当てまで、対外的に説明可能な財務諸表の作成と高度な経営スキルでの運用が求められるようになってきました。
これらの時代の変化を踏まえ、長期的な将来の環境への可能性として、医業のみならず法令で規制される許認可事業には、適切な経営を維持するため銀行業等と同じように自己資本規制等の具体的な数値目標が掲げられることがあるかもしれず、この大きな潮流を踏まえたうえで医療法人経営を行うことが求められています。

医療法人の設立とは

医療法人を設立するには、一般の株式会社等のように自由な時期に設立することができず、法人設立には都道府県知事の認可(複数の医療法人に病院・診療所を開設する広域医療法人の場合は厚生労働大臣の認可)を得ることが必要です。
設立認可の時期は都道府県によっても変わり、医療法人件数の多い東京都、大阪府、神奈川県、埼玉県、兵庫県、千葉県、鹿児島県は年2回と決まっておりますので、医療法人の設立には綿密な準備と適切な手続の対応が要求されます。
作成する書類のボリュームは、おおよそ80~110枚×5~6部(事案および提出先により異なります)となります。充実した医療法人の設立をお考えの先生方はおよそ申請の3ヶ月までにご相談ください。

設立認可申請のながれ

当サイトから面談をご予約ください。日程調整のうえお話をお伺いします。ご相談のみですと有料ですが、その場でご依頼いただきますと相談料はいただきません。ご依頼を前提にご相談をご希望の場合には、契約書等をご用意いたしますので、ご印鑑をお持ちください。
 
弊事務所では、事前に料金表をお渡しし、書面でご説明して納得していただいてから手続を進めています。
手続を進めるにあたってご用意いただく書類と必要数をご案内いたします。
役所等で証明書を取得する必要がある場合でも分かりやすく説明しています。
ご依頼いただいた手続を遂行するために、事前にその他の細かい手続をしなくてはならない場合があります。
この付随手続は、書類準備と同時並行または順番に行いますので、無駄がありません。
ご用意いただいた書類を元に、手続の準備を進めます。
弊事務所では、ERPシステムを導入しておりますので、圧倒的にスピーディな書類準備を実現しており、多忙な医師/歯科医師の先生の負担を最小限にとどめています。
 
手続に必要な情報と書類が全て整ったことを確認したうえ、医療法人認可申請の法律手続を進めるかどうか決定します。
当事務所では医療法人認可申請に当り、この段階で多数の実績に基づいて総合判断をするため、これまでの初回医療法人設立手続での認可取得率は100%です。
 
事前審査では、各所轄官庁によって事務取扱が異なるため、認可申請を受け付ける役所の担当課で医療法人設立の個別事案ごとに設立スキームを説明します。
この説明により役所担当者の理解を促進することで、設立認可のための積極的な協力を得ます。これが当事務所の高い初回認可取得率を誇るノウハウです。
 
仮申請で申請内容を確認・準備が完了しましたら、医療法人設立認可の本申請です。本申請では、法人設立時の関係者全員の実印を押印いたします。
押印については、ご希望の日柄があるお客様も出来るだけご希望に沿うようにしています。
 
医療審議会に諮問
 
医療審議会での審議
 
医療審議会から答申
 
医療審議会の答申を受け、所管の監督官庁の認可権者が医療法人設立認可の決裁をします。この時点までスムーズにくることができれば、登記手続や法人医院開設許可等の医療法人認可取得後のスケジューリングを視野に含め、事前にスムーズな準備を進めます。
 
長らく手続をしてきた医療法人の設立認可です。おめでとうございます。
設立認可書交付・送付がなされると、医療法人を登記して法人格を確立するための要件である認可権者の認可証を得ることができます。
 
管轄法務局において医療法人設立登記申請を行います。現在、日本全国の各法務局は管轄事務の整理を行っており、近くの法務局が医療法人を管轄する管轄法務局とは限りませんので注意が必要です。登記手続は管轄法務局の規模と繁忙時期により変動しますが、おおよそ1~2週間前後です。
 
医療法人設立登記完了。この時点で初めて医療法人が法人格を得て存在することになります。
 
医療法人病院/診療所開設許可申請(管轄保健所)。ここから医療法人病院・診療所を開設するための諸手続を行います。
この付随手続は、特別な理由がある場合を除いて、一般的にご依頼いただいた手続に含んでいますので、追加費用はいただきませんが、ケースによって細かい手続が発生する場合があります。
 
医療法人病院/診療所開設許可(おおよそ1ヶ月前後)
 
保険適用届事前調整。法人医院として開設と同時に健康保険の適用を切り替えるための入念な調整を行います。
このプロセスによって法人医院の開院時期に影響があるため、実績と経験豊富な当事務所にお任せください。
 
予定の病院・診療所の開設時期になり法人としての病院・診療所経営にスイッチします。先の医療法人病院/診療所の開設許可および保険適用の事前調整を行うことで予定通りのスムーズな移行ができます。法人運営に移行したら、法人病院/診療所開設届出・保険適用届・個人病院/診療所廃止届(管轄保健所)を行って医療法人設立の全プロセスが終了します。
書類をお返ししてご報告いたします。ご報告時に報酬金等の費用清算をお願いします。

医療法人設立に必要な書類

 1.医療法人設立認可申請書
 2.定款(寄附行為)
 3.設立当初において医療法人に所属すべき財産の財産目録
 4.設立財産目録の明細書
 5.減価償却計算書
 6.不動産鑑定評価書
 7.設立時の負債内訳書
 8.設立時の負債内訳書《リース物件用》
 9.負債(買掛金)内訳書
10.負債の説明資料
11.負債の根拠資料
12.負債残高証明及び債務引継承認願
13.買掛金引継承認願
14.リース物件一覧表
15.リース契約書写し
16.リース引継承認願
17.役員・社員名簿
18.基金拠出契約書等
19.拠出(寄附)申込書
20.預金残高証明書
21.設立総会議事録
22.設立趣意書
23.開設しようとする医療施設の概要
24.施設の案内図、見取図、平面図
25.施設の使用権原
26.覚書
27.近傍類似値について
28.建物登記簿謄本
29.土地登記簿謄本
30.設立後2年間の事業計画書
31.設立後2年間の予算書
32.予算明細書
33.職員給与費内訳書
34.履歴書
35.印鑑証明書
36.委任状
37.役員就任承諾書
38.管理者就任承諾書
39.理事長管理者医師/歯科医師免許証写し
40.理事医師/歯科医師免許証写し
41.過去2年間の実績表
42.確定申告書一式写し2年分
43.従業者名簿
44.医療従事者充足状況
45.開設届写し
46.その他
※東京都の場合の例です。

医療法人設立のよくあるご質問と回答集

※個々の条件等により多少変わることがあります。

 
  ・医療法人を設立したいのですが、資格など条件を教えてください。
  ・医療法人に種類があると聞きましたが、どんな医療法人があるのでしょうか。
  ・医療法人はいつでも設立できるのですか。
  ・法人の名前は自由に決めていいのですか。
  ・法人の主たる事務所の所在地はどこにしたらよいのですか。
  ・法人設立にあたっての財産の拠出はどういう風にどのくらいにすれば良いのですか。。
  ・個人で2年間の開業実績が必要なのは本当ですか。
  ・賃貸物件で開業したいのですが、どうしたら良いですか。
  ・MS法人(メディカル・サービス法人)とは何ですか。
  ・医師(歯科医師)以外は理事長になれないのですか。
  ・医療法人社団と医療法人財団はどう違うのですか。
  ・拠出する財産を出来るだけ少なくする方法はありますか。
  ・大学生の子どもが理事に就任することは出来ますか。
  ・理事に就任するための資格はありますか。
  ・監事に就任するための資格はありますか。
  ・監事に就任するための留意事項はありますか。
  ・理事長の兼任はできますか。
  ・基金制度とは何ですか。
  ・債務の引継ぎとは何ですか。
  ・個人医院を開設する際に、両親から借金をしました。医療法人化にあたってこの借金の取扱いを教えてください。
  ・個人医院を開設して2年目です。近く医療法人にしたいのですが、初年度が赤字でした。医療法人にできますか。
  ・一人医師医療法人とは何ですか。
  ・複数ヶ所の診療所を開設する一人医師医療法人の設立はできますか。
  ・現在、医師/歯科医師と助手・事務員のみで個人医院を経営しています。医療法人を設立する場合、看護師や歯科衛生士が必要と聞きました。本当ですか。。
  ・医療機器や備品等を医療法人に出資せずに設立後の法人と貸借したいと考えています。この取扱いは可能ですか。
  ・医療法人は中間法人だと聞いたことがあります。中間法人とは何ですか。
  ・医療法人化すると、税金の申告手続はどのように変更になりますか。
  ・医療法人の附帯業務とは何ですか。
  ・現在個人医院を経営しています。医療法人にすると家族全体の家計への影響と家族従業員の所得はどうなりますか。
  ・医療法人化の手続で医療機器や備品等の拠出が求められました。この際の税金はどうなりますか。
  ・医療法人化した場合の消費税の課税はどのようになりますか。
  ・診療所で使用している土地・建物を個人で所有しています。診療所兼自宅なのですが、医療法人に拠出しなければならないのでしょうか。
  ・ビル・マンションの一室で診療所を開いています。医療法人にすることはできますか。
  ・社会保険が強制加入と聞きましたが、どうなんでしょうか。
  ・医業未収金の出資を予定していましたら、実際の社会保険報酬が出資予定額を下回ってしまいました。どうしたらよいでしょうか。
  ・医療法人の認可が下りたら、すぐに法人医院にしてもよいのですか。
  ・医療法人を運営していくときに必要となる手続を教えてください。
  ・医療法人に対する指導・監督手続は何ですか。
   
・医療法人を設立したいのですが、資格など条件を教えてください。

医療法人は理事3名以上・監事1名以上による合議制の法人ですが、医療法人は理事長が医師または歯科医師でなければなりません。この点、医療法では例外規定が設けられていますが、理事長死亡により資格者が一時的に不在になった場合といった特殊な事情がある場合に限られますので、初めから例外規定を根拠に医療法人を設立することはできないと考えた方がよいです。

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・医療法人に種類があると聞きましたが、どんな医療法人があるのでしょうか。

医療法人という医療法上の法人格の基礎に、社団と財団という民法上の法人の性質が伴っています。社団は人間である自然人と株式会社等の法人といった社会的存在が集まった団体であり、財団は寄附等によって構成された財産を基盤として成立する点が大きくことなります。医療法人を新規に設立する場合には社団でも財団でも任意に選択できますが、多くの一人医師医療法人のケースは個人医院の法人化というスキームであることからそのほとんどが社団であり、法人の名称に「社団」が入っていなくとも実質的に「医療法人社団」であることがほとんどです。

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医療法人はいつでも設立できるのですか。

医療法人の設立は都道府県知事等の認可制になっています。認可申請は多くの都道府県で年2回ですが、年3回や年1回のところもあります。また設立申請にあたっては説明会や事前審査等もありますので、法人設立の7~10ヶ月ほど前から準備をする必要があります。

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法人の名前は自由に決めていいのですか。

医療法人の名称は「医療法人 ○○会」という名称が多く一般的です。この○○会という名称は法律上の規定ではありませんので強制されるものではありませんが、都道府県によっては○○会の形式にするよう指導されることもありますし、あまり奇抜な名称では社会的信用面で問題をかかえる可能性もありますので、医療法人として妥当な名称をおすすめいたします。

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法人の主たる事務所の所在地はどこにしたらよいのですか。

医療法人設立の多くのバターンである個人医院の法人成りの場合、既存の診療所を主たる事務所にすることが一般的です。一方、いわゆる多店舗展開や複数の都道府県に跨った広域医療法人の場合には、事務処理等の間接部門を集約し処理を行う本部(株式会社等でいう本社)を独立して設けることも一般的です。この後者の場合には、医療機関や本院からは完全に独立した事務所を設置することも可能です。

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・法人設立にあたっての財産の拠出はどういう風にどのくらいにすれば良いのですか。

医療法人設立の出資金は病院(診療所)の規模や設備によりケースバイケースですが、資産要件のひとつとして2ヶ月分以上の運転資金を有していること、とされています。これは国民健康保険や社会保険の保険請求分が2ヶ月遅れで入金されることから、法人を設立してすぐに資金ショートを起こさないようにするための条件として必要になります。

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個人で2年間の開業実績が必要なのは本当ですか。

開業と同時に医療法人を設立することは可能です。しかし都道府県によっては2年間の開業実績を求めるところがありますので、設立にあたっては確認のうえで手続をとられることをおすすめします。

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賃貸物件で開業したいのですが、どうしたら良いですか。

医療法人の設立にあたっては医業という性質上、一定期間安定的に開業することが求められます。賃貸物件で開業をする場合には10年程度の長期間にわたる確実な賃貸借契約が求められます。しかし賃貸借契約は2年間の契約期間が一般的で、いきなり10年の契約は貸主が嫌がる場合があります。ビルなどへの入居で開業・法人設立するような場合には2年間等の賃貸契約書と長期にわたっての賃貸借を約する文書を用意して対応を検討いたします。

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MS法人(メディカル・サービス法人)とは何ですか。

MS法人(メディカル・サービス法人)とは、医療法人は公益法人として営利事業を禁止されているため、直接売店などを営むことができません。そこで売店の運営や医療機器のリース事業等を行うために設立する営利事業を行う法人のことをいいます。ただし、医療法人が営利事業を禁止されていることは変わらないため、MS法人の役員等や税務調査などは厳しくチェックされますので設立には十分な注意と配慮が必要です。

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医師(歯科医師)以外は理事長になれないのですか。

医療法人の理事長に関しては「医療法人(次項に規定する医療法人を除く。)の理事のうち1人は、理事長とし、定款又は寄附行為の定めるところにより、医師又は歯科医師である理事のうちから選出する。ただし、都道府県知事の認可を受けた場合は、医師又は歯科医師でない理事のうちから選出することができる。」(医療法第46条の3)と規定されており、原則としては医師(歯科医師)でなければなりません。

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医療法人社団と医療法人財団はどう違うのですか。

医療法人には社団と財団の2種類があります。社団は社員たる人を基礎として設立され、財団は財産たる寄付行為を基礎として設立されます。社団と財団の違いは設立後の法人の運営方法の違いにもあらわれ、社団の場合には一般の会社のように定款の規定によって運営されますが、財団は寄付行為によって規定され運営されるようになります。通常は持分出資の定めのある社団で設立するのが一般的です。

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・拠出する財産を出来るだけ少なくする方法はありますか。

医療法人の設立認可を取得するための必要最低条件という観点からは、2か月分以上の運転資金が必要です。これを健康保険の未収金で賄うことにより、現金(キャッシュ)の拠出を押さえることができます。このスキームを利用する場合、過去の収益傾向から運転資金の少ない時期を選んで設立するという積極的な手段も存在します。また、この最低限の運転資金で設立する場合には、これ以外の拠出財産は全て医療機器等の物権による、いわゆる現物出資で賄うことを併せて行えば、キャッシュの支出は最低限に抑えられます。

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・大学生の子どもが理事に就任することは出来ますか。

はい、可能です。法人の役員に就任する資格は特に法律上の規定はありませんが、事理弁識能力が必要なため満15歳以上であり、かつ欠格事由に該当しない場合は、理事や監事として選任されることができます。

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・理事に就任するための資格はありますか。

一つ前の質問と同じ趣旨です。欠格事由に該当しないこと(成年被後見人や被保佐人など)、法人や禁固以上の刑に処せられその執行を終わるまでまたは執行を受けることがなくなるまでの者ではないこと、一定の他社の取締役、監査役、会計監査人との兼任が禁止されていること、といった条件となります。

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・監事に就任するための資格はありますか。

一つ前の質問と同じ趣旨です。欠格事由に該当しないこと(成年被後見人や被保佐人など)、法人や禁固以上の刑に処せられその執行を終わるまでまたは執行を受けることがなくなるまでの者ではないこと、一定の他社の取締役、監査役、会計監査人との兼任が禁止されていること、といった条件となります。

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・監事に就任するための留意事項はありますか。

監事は、理事とともに医療法人の役員ではありますが、法人を直接運営する理事とは異なり、理事の法人運営が適法・適切に行われているかどうかを監視・監督する立場となります。したがって、監事が直接法人運営に携わることはできません。

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・理事長の兼任はできますか。

医療法人の定款: 医療法人社団や医療法人財団の定款によって、理事長の役職について兼任の有無が規定されている場合があります。定款に兼任禁止の規定がない限り兼任が認められる場合もありますが、法人の運営に支障が出ないことが前提です。

公益性の観点: 医療法人は公益性を重視しており、法人の目的を達成するために理事長が責任者として役割を果たせるかどうかが求められます。理事長が兼任する場合、その役職が法人運営に悪影響を及ぼさないようにしなければならないため、役割や時間の使い方に注意が必要です。

法的規定: 医療法人法や社会福祉法人法、その他の関連法規には、理事長の役職に関する具体的な制限は少ないですが、法人運営が適切に行われるためには理事長がその職務を全うする必要があります。

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・基金制度とは何ですか。

基金制度とは、医療法人がその事業活動において安定した運営を行うために、事業収益やその他の収入から積み立てられる資金のことを指します。医療法人の財務運営において重要な役割を果たす制度であり、法人の資産を積み立てて、将来の医療サービス提供や施設運営に必要な資金を確保するための仕組みです。主な目的として以下が挙げられます。
事業運営の安定化: 医療法人の経営が安定し、事業の継続的な運営を支えるために、外部の資金調達に依存せずに自前の資金で運営することを目的としています。特に、医療機器の更新や施設の改修、スタッフの給与支払いや新規事業の開設に使われます。
社会的責任の履行: 医療法人が提供する医療サービスの質を維持・向上させるために、必要な設備投資や人材の育成を行う資金を確保することも目的としています。また、地域社会に対する医療提供の責任を果たすためにも基金は重要です。
非常時の対応: 緊急の資金が必要な際や、事業が一時的に赤字に陥った場合に、基金から資金を取り崩して運営を維持するためにも使用されることがあります。特に自然災害や感染症の流行などの不測の事態に備えるためです。

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・債務の引継ぎとは何ですか。

個人医院(個人事業主として運営している医師の医院)が医療法人を設立する際に、個人事業主として負っていた債務(借入金やその他の負債)を、新たに設立する医療法人が引き継ぐことを「債務引継ぎ」と呼びます。この債務引継ぎのプロセスは、医療法人設立認可申請手続の重要な一部であり、経営移行の際に発生する問題です。
個人医院の医師が医療法人を設立する際には、通常、事業を法人化するために個人としての医院を法人に譲渡する形になりますが、その際、個人事業主が負っていた債務が法人に引き継がれるかどうかについて、明確な取り決めをしなければなりません。
個人医院が抱える債務(例: 銀行からの借入金、医療機器のローン、未払金など)を、医療法人が引き継ぐ場合です。この場合、事業譲渡契約書において、法人がどの債務を引き継ぐかを明確に記載し、債権者(銀行や取引先など)との合意が必要になります。
例えば、医師が個人事業主として医療機器の購入資金を借り入れていた場合、その借入金を医療法人が引き継ぐ形になります。この場合、借入契約に基づいて新しい法人が借入金の返済責任を負うことになります。

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・個人医院を開設する際に、両親から借金をしました。医療法人化にあたってこの借金の取扱いを教えてください。

医療法人を設立する際に、個人医院を開設するために両親から借金をした場合、この借金の取扱いについては、医療法人設立時に適切に処理する必要があります。医療法人化するにあたり、個人事業から法人に移行する過程での借入金や債務の扱いは重要なポイントとなります。
個人医院の借金を医療法人が引き継ぐ場合、医療法人設立時に借金の引き継ぎに関する取り決めを行います。
1. 借入契約の見直し: 両親との間で交わした借入契約を見直し、医療法人がその借金を引き継ぐことに合意します。通常、この契約には返済スケジュールや利息、返済方法が明記されていることが必要です。
2. 場合によっては、医療法人設立時に両親からの借金を法人が引き継がず、個人事業主が引き続き返済していくことも選択肢の一つです。
これは契約の継続であり、両親からの借金について、法人設立後も個人事業主(医師)が引き続き返済を行うことを両親と合意します。この場合、医療法人は借金を引き継がないため、返済は個人の責任となります。
3. 両親に返済の免除をお願いする場合:医療法人設立時に、両親からの借金を返済する代わりに免除をお願いすることも考えられます。この場合、両親と合意の上、借金の免除契約を交わすことが必要です。

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・個人医院を開設して2年目です。近く医療法人にしたいのですが、初年度が赤字でした。医療法人にできますか。

初年度が赤字であることについても、設立を行うこと自体に直接的な制限はありません。つまり、赤字であったとしても医療法人設立の申請ができるということです。しかし、赤字の状態がどのように影響を及ぼすかについては、詳しく検討する必要があります。
医療法人を設立するにあたって、行政(厚生労働省や都道府県)は、設立後の医療法人が安定的に経営されるかを審査します。これには、医療法人の経営計画や、収益性が将来的に確保できるかという点が重要な要素となります。
赤字の理由が一時的なものであり、今後の経営改善が見込める場合には問題ありません。しかし、長期的に赤字が続くような経営状況である場合、医療法人の設立が難しくなる可能性があります。
今後の収益見込み: 設立申請時に提出する計画書では、赤字がどのように改善されるのか、今後の利益がどのように見込めるのかを説明する必要があります。
財務基盤の健全性: 事業が赤字であっても、ある程度の自己資本や安定した資金繰りが確保できていれば、設立が認められる可能性が高いです。逆に、財務基盤が脆弱であると判断される場合、設立が認められない場合もあります。

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・一人医師医療法人とは何ですか。

「一人医師医療法人(ひとりいし いりょうほうじん)」とは、医師が1人だけで設立し運営する医療法人を指します。具体的には、医師1人が医療法人の理事長(または理事)となり、法人の運営を行う形態の医療法人です。
通常、医療法人は複数の医師や専門職を含む医療機関として設立されることが多いですが、「一人医師医療法人」は、医師1人で設立されるため、医師が全責任を負って法人運営を行うことになります。
理事長が1人であること: 一人医師医療法人の場合、理事長(法人の代表者)は医師1人であり、経営・運営の全責任を負います。医療法人設立時に、法人の代表者として医師1人がそのまま理事長になるケースが多いです。

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・複数ヶ所の診療所を開設する一人医師医療法人の設立はできますか。

医療法人を設立するには、理事長が医師である必要があります。複数の診療所を運営する場合でも、理事長が1人の医師であることが基本です。
医療法の遵守: 医療法人が複数の診療所を開設する場合、各診療所が独立して運営されるわけではなく、全ての診療所が医療法人の名義で運営されることになります。このため、法人設立申請時に、法人全体として運営する診療所の数や、それぞれの診療所で提供する医療内容などを明確に示す必要があります。
診療所ごとの医療設備や人員: 各診療所が適切に運営されるためには、施設の規模や設備、人員配置についても確認が必要です。複数の診療所を運営する場合、各診療所に必要な医師や看護師、事務職員などが配置されているか審査対象となります。通常は、分院を担当する医師は理事になります。

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・現在、医師/歯科医師と助手・事務員のみで個人医院を経営しています。医療法人を設立する場合、看護師や歯科衛生士が必要と聞きました。本当ですか。

医療法人を設立する場合、必ずしも看護師や歯科衛生士が必要というわけではありませんが、法人としての運営において医療の質や法令を遵守するためには、適切な人員配置が求めらます。以下の条件が関係します:
(1) 医療機関の規模とサービス内容
診療科目や提供する医療サービスの内容によって、必要となるスタッフの種類は異なります。例えば、内科や外科などの診療科目では、看護師が必要となるケースが多いです。また、歯科医院を運営する場合には、歯科衛生士が必要となることが一般的です。
医療法人設立申請時には、提供する医療サービスに必要なスタッフや設備の整備が求められます。例えば、患者に対する医療行為を行う場合、適切な医療スタッフ(看護師や歯科衛生士など)が必要になってきます。
医療法や歯科医師法、労働基準法などの法律に基づいて、一定のスタッフ数や配置が求められます。これにより、患者への医療サービスの質を保つために、適切な職種が必要とされることがあります。例えば、看護師や歯科衛生士は、医療行為を補完する役割として、法律で配置が求められる場合があります。

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・医療機器や備品等を医療法人に出資せずに設立後の法人と貸借したいと考えています。この取扱いは可能ですか。

医療法人を設立する際、法人の設立には基本的に出資が必要です。出資は、法人の運営資金や医療機器、施設の整備費用を確保するために重要です。通常、法人設立の際に、出資金や施設、医療機器などが法人に「出資」され、法人資産として管理されます。
貸借契約と法人の利益相反に注意:医療法人と設立者との間で貸借契約を結ぶ場合、利益相反に関する問題を避けるため、契約条件が適正であることが求められます。特に、契約内容が法人にとって不利な条件でないか、また他の法人関係者(役員など)が不当な利益を得るようなことがないかを注意深く確認する必要があります。

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・医療法人は中間法人だと聞いたことがあります。中間法人とは何ですか。

医療法人は「利益を目的としない中間的な法人」
医療法人は、利益を追求することを目的とする営利法人とは異なり、医療サービスを提供することによって地域社会の健康維持や福祉向上を目的とする法人です。したがって、営利法人と異なり、法人の利益が法人の運営や医療提供に使われ、株主や個人に分配されることはありません。こうした性質から、医療法人は営利法人と非営利法人の中間的な存在として捉えられることがあります。
中間法人としての役割:医療法人は、通常、医師がその設立者となり、医療サービスの提供に必要な資金や設備を整え、医療行為を行います。このように、直接的な商業活動を行うわけではないため、営利法人のように営利を目的にしているわけではありません。そのため、利益の分配は行われず、医療法人が得た収益は、医療活動の継続や設備投資、スタッフの雇用などに使われます。

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・医療法人化すると、税金の申告手続はどのように変更になりますか。

医療法人化すると、税金の申告手続きが大きく変更されます。個人で運営していた医療機関から法人に変わることで、税務上の扱いや申告方法が変わるため、以下の点に注意が必要です。
1. 個人事業主から法人への税務の変化:個人で医院を運営していた場合、収益に対して所得税が課税されます。所得税は、個人の所得に基づいて計算され、年間の収入から必要経費を引いた残りに対して税金がかかります。消費税についても、年間売上が1,000万円以上であれば消費税の課税事業者となり、消費税の申告・納付が必要です。
2. 医療法人化すると、以下の点で税務が大きく変更されます。
法人税:法人に移行することで、税金は個人の所得税から法人税に切り替わります。法人税は法人の利益に対して課税されます。法人税率は、企業規模や所得に応じて段階的に異なりますが、個人所得税よりも税率が低い場合があります。
消費税:法人が設立されると、消費税の課税事業者となる条件は引き続き適用されます。個人事業主と同様、年間売上が1,000万円を超える場合、消費税を納める義務が生じます。
住民税・事業税:法人化すると、法人に対して法人住民税や法人事業税が課税されます。法人住民税は法人の所在地の地方自治体に納め、法人事業税は法人の利益に基づいて課税されます。個人の住民税とは異なり、法人の税務申告が必要です。

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・医療法人の附帯業務とは何ですか。

医療法人の附帯業務とは、医療法人が本来の目的である医療業務に付随して行うことが認められている業務のことです。つまり、医療法人の主たる業務である「医療提供」に関連して、許可された範囲で行えるその他の業務を指します。
医療法人は、医療サービスと併せて介護サービスを提供することができます。これには、訪問介護や通所介護、介護老人保健施設(老健)などが含まれます。医療法人が介護業務を行う場合、医療との連携を強化し、地域の高齢者や患者のニーズに応えることが期待されます。福祉施設(例えば、特別養護老人ホームやデイサービスセンター)の運営も可能です。これも医療法人の附帯業務に含まれ、医療と福祉が連携したサービスの提供が行われます。
医療法人は、医療情報の提供に関連する業務を行うことができます。例えば、医療の最新情報や健康に関するアドバイスを提供することができ、地域住民の健康意識の向上を図る活動が行われます。医療に関する教育や研修を行うこともできます。たとえば、医療従事者向けの研修会や勉強会を開催することができ、医療技術や知識の向上を図ります。また、医学生や看護学生などの実習を受け入れることもあります。

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・現在個人医院を経営しています。医療法人にすると家族全体の家計への影響と家族従業員の所得はどうなりますか。

医療法人を設立することにより、個人医院の経営が法人化されると、家族全体の家計や家族従業員の所得に対していくつかの影響があります。これには税務面や収入の分配方法、社会保険などが関わってきます。以下に詳細に説明します。
個人事業主であった場合、収入は個人の所得に対して課税されるため、所得税が課税されますが、法人化すると法人税が適用されます。
個人の所得税:個人事業主時代は、収入から必要経費を差し引いた金額に対して所得税が課され、税率は累進課税で高くなることがあります。特に収入が高い場合、高い税率が適用されます。
法人税:医療法人になると、法人税が課税されます。法人税は、個人の所得税と比べて税率が比較的低い場合があります。中小法人であれば、一定の所得額までは軽減税率(15%など)が適用されることもあります。ただし、法人が支払う税金は法人の利益に基づきます。
2. 所得の分け方(役員報酬):法人化後、医療法人の代表者(医師など)は役員報酬を受け取ることになります。この役員報酬は法人の経費として計上でき、法人税の計算に影響を与えます。つまり、医師が法人から受け取る報酬は法人の経費となり、法人税が減少する一方で、個人の所得税が課税されます。
家族が従業員として働く場合、家族の給与も役員報酬のように法人の経費として支払われ、税務上の取り扱いが異なります。家族全員が役員報酬や給与を受け取ることができますが、過剰な報酬を支払うと、税務署から指摘される可能性があるため、適正な報酬額を設定する必要があります。
3. 利益の分配:法人化することにより、利益の分配方法が変わります。個人事業主時代は、利益がそのまま個人の所得として反映されますが、法人化後は、法人が得た利益を法人税として納めた後に、役員報酬や配当という形で家族に分配することができます。この方法により、個人の所得税の負担を調整し、節税効果を狙うことが可能となります。
4. 家族の社会保険の取り扱い:法人化すると、法人の従業員として働く家族(特に役員や事務員など)は、社会保険(健康保険、厚生年金など)の適用を受けることになります。個人事業主の場合、従業員がいない場合は国民健康保険や国民年金に加入することが一般的ですが、法人化後は、法人の役員や従業員は厚生年金保険や健康保険に加入し、法人が保険料を負担することになります。
家族が従業員として働く場合、給与所得者としての扱いになりますので、給与から社会保険料が引かれ、法人がその分を負担する形となります。これにより、家族従業員の社会保険料が増加する可能性があります。

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・医療法人化の手続で医療機器や備品等の拠出が求められました。この際の税金はどうなりますか。

医療機器や備品等の拠出が求められる場合、これらの財産を法人に譲渡することが必要になります。個人医院から医療法人に対して、医療機器や備品を拠出(譲渡)する際に関する税金の取り扱いは、いくつかの要素に基づいて決まります。
拠出した資産の取り扱い:医療法人設立の際、個人医院が所有していた医療機器や備品などの資産を医療法人に譲渡する場合、基本的にはこれらの資産は法人に対して譲渡されたものとして取り扱われます。この譲渡には、以下の税金が関わります:
1. 消費税
個人医院が医療機器や備品を法人に譲渡する際、消費税がかかる場合があります。消費税の取り扱いは、以下の点に注意が必要です。
課税事業者の場合:個人医院が消費税の課税事業者である場合、医療機器や備品を法人に譲渡すると、その譲渡に消費税が課税されます。譲渡時の時点で、消費税の納付義務が発生します。
免税事業者の場合:個人医院が消費税の免税事業者であった場合、医療機器や備品の譲渡に対して消費税は課税されません。
また、消費税が課税される場合、譲渡時点で譲渡価格に消費税が含まれることになります。個人医院は、譲渡した物品に対して消費税の支払いを求められることになりますが、同時に、医療法人が支払った消費税を仕入税額控除として取り扱うこともできます。

2. 譲渡所得税(所得税)
個人医院が医療機器や備品を法人に譲渡する場合、譲渡された資産の譲渡益に対して所得税が課税されることになります。これには、以下の点が影響します。
譲渡価格と簿価の差額に対して、譲渡所得税が課税されます。
譲渡価格は、個人医院がその資産を法人に譲渡する際に設定した価格です。
簿価は、医療機器や備品の購入時の価格から減価償却などを考慮した残存価値です。
譲渡価格が簿価より高ければ、譲渡益(利益)が発生し、それに対して所得税(譲渡所得税)が課税されます。この譲渡益は、個人の総所得に合算され、累進課税に基づいて税額が決定されます。
譲渡益の計算:
譲渡価格 − 購入価格(減価償却後の簿価)= 譲渡益
譲渡益に対して、通常の所得税(最大45%)が課税されます。
3. 資産の減価償却に伴う取り扱い
医療機器や備品が減価償却資産である場合、譲渡時点で減価償却残高を考慮する必要があります。譲渡によって、減価償却残高の清算が必要となり、これも税務上の問題になります。
減価償却費用の取り扱い:譲渡する際に、その資産が減価償却されていた場合、残存簿価(減価償却後の価値)*に基づいて譲渡価格が設定されます。
減価償却の影響:減価償却費用を計上していた資産の譲渡時には、減価償却累計額を考慮して、譲渡益の計算が行われます。

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・医療法人化した場合の消費税の課税はどのようになりますか。

日本の消費税法において、消費税は課税事業者に対して課税されます。医療法人が設立された場合、消費税の取り扱いは以下のように進められます:
医療法人が行う取引のうち、消費税が課税されるのは「課税売上」です。医療法人が提供する医療サービスに関しては、基本的には消費税が非課税となりますが、消費税が課税される取引もあります。
医療行為:診察や治療など、医療法人が提供する医療行為に対しては消費税はかかりません。これらは「非課税取引」となります。
医療機器の販売や賃貸:医療機器や医療関連の商品を販売する場合や貸し出す場合には、消費税が課税されることがあります。例えば、患者に対して医療機器をレンタルする場合、消費税が課されることがあります。
介護サービス:医療法人が提供する介護サービスについても、基本的には消費税非課税ですが、介護保険対象外のサービスやオプションサービスには消費税がかかることがあります。
2. 消費税の控除
法人が仕入れた商品やサービスに対して支払った消費税(いわゆる「仕入税額控除」)は、法人が納付するべき消費税額から差し引くことができます。これにより、実際に法人が支払う消費税の額を減らすことができます。
仕入税額控除:医療法人が仕入れた物品(例えば医療機器や事務用品など)に対して支払った消費税については、その消費税額を控除することができます。したがって、法人が消費税を支払う場合、その分の仕入れにかかった消費税を控除し、実際に支払うべき消費税額を軽減することができます。

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・診療所で使用している土地・建物を個人で所有しています。診療所兼自宅なのですが、医療法人に拠出しなければならないのでしょうか。

医療法人を設立する際、土地や建物を法人に拠出する義務は必ずしもないということです。医療法人を設立するために必須なのは、法人に必要な設備や資産が医療機関として適切に運営できる状態にあることです。医療法人の設立において土地や建物を拠出する義務があるかどうかは、設立時の運営に必要な条件に基づいて判断されます。具体的には、以下の2つの視点が関係します。
施設の所有と法人の運営:医療法人の施設(診療所)に関連する土地や建物は、医療法人が使用する施設として運営される必要があります。
もし個人所有の土地・建物を引き続き使用し、かつ法人化する場合は、その土地・建物を法人に賃貸する形(個人所有者から法人へ貸し出す形)にすることが一般的です。この場合、法人は賃貸料を支払うことになりますが、土地や建物を拠出する義務はありません。
医療法人が資産として所有する場合:医療法人が診療所や関連する施設の所有権を持つことを望む場合、土地・建物を医療法人に譲渡(拠出)する必要があります。譲渡時には譲渡契約書を交わし、税務上の手続きを踏むことが求められます。譲渡に伴い、譲渡益(売却利益)が発生すれば、譲渡所得税などが課税される可能性もあります。このような譲渡の選択は、法人設立後の運営をどうしたいか、そして譲渡することで得られる税務上のメリットやデメリットを考慮して決めることが重要です。

土地・建物を法人に譲渡する場合の税務上の取り扱い
土地・建物を個人から医療法人に譲渡する場合、以下のような税務上の取り扱いが考えられます。
譲渡所得税:譲渡益が発生する場合、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税は、譲渡価格と簿価(購入価格−減価償却額)との差額に基づいて計算されます。
譲渡益が発生した場合、その利益が個人の所得となり、累進税率で課税されることになります。
消費税:土地や建物の譲渡に関して、消費税の課税対象となるかどうかは、譲渡される資産がどのような種類かに依存します。

土地の譲渡は消費税の対象外ですが、建物の譲渡に関しては、一定の条件下で消費税が課税されることがあります。医療法人に譲渡する場合、譲渡する資産が課税事業者の取り扱いとなる場合、その譲渡に消費税が課される可能性があります。
個人所有の土地・建物を法人に貸し出す場合:個人が所有する土地や建物を医療法人に貸し出す場合、その取引は賃貸契約に基づいて行われます。賃貸契約を結ぶ際、法人は賃料を支払い、個人は賃料収入を得ることになります。この場合、賃貸料の設定が適正であること、税務上の問題がないことを確認することが重要です。

賃貸契約の税務:賃貸契約によって得られる賃貸収入に対して、所得税が課税されます。
消費税の取り扱い:賃貸契約に関連する取引は、消費税が課税される場合があります。賃貸契約に消費税がかかるかどうかは、賃貸条件や契約の内容によって異なります。

法人の設備投資としての取り扱い:医療法人設立に際して、土地や建物を法人が拠出する場合、土地や建物は法人の資産として計上され、法人の固定資産となります。この場合、法人はその資産に対して減価償却を行うことになります。減価償却によって、法人の税務上の負担を分散させることができます。

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・ビル・マンションの一室で診療所を開いています。医療法人にすることはできますか。

医療法人を設立する際、診療所の**場所(施設)**に関して一定の条件を満たす必要があります。診療所として適切な環境であるかどうかが、医療法人設立の審査で確認されることになります。
建物の用途の確認:診療所がビルやマンションの一室にある場合、その施設が診療所として使用することに適しているかが重要です。特に、施設の用途が「医療施設として認められるか」に関して、建物の用途地域や規模などの条件を確認する必要があります。
建物の用途が「診療所」として許可されていることが必要です。一般的に、商業施設や住宅地域でも、診療所として使用することは認められる場合がありますが、建物の用途変更の許可が必要になることもあります。
建物の構造や設備が診療所として適切かも確認されます。例えば、患者を受け入れるための広さ、診療機器を配置するためのスペース、診察室や待機室の確保、バリアフリー対応などの施設基準が求められることもあります。
消防法や建築基準法の遵守:診療所として施設を使用するためには、消防法や建築基準法などの法的要件もクリアしなければなりません。診療所が入っているビルが消防法や建築基準法の基準を満たしていない場合、必要な改善措置が求められることもあります。

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・社会保険が強制加入と聞きましたが、どうなんでしょうか。

医療法人を設立すると、法人としての運営に関して、社会保険への加入が強制されることになります。これは、医療法人が法人として運営される場合、従業員が一定数以上であることが多いためです。
健康保険:医療法人の従業員(正社員など)に対して、健康保険への加入が義務付けられます。医療法人が健康保険の加入者となる場合、加入手続きは、協会けんぽ(全国健康保険協会)か、法人が設立している健康保険組合に加入することになります。
厚生年金保険:従業員が厚生年金保険にも加入することになります。厚生年金は、従業員が働いている間、年金が積み立てられ、将来の年金受給に繋がるため、社会保険制度の一環として加入が義務付けられています。
雇用保険:医療法人が従業員を雇う場合、雇用保険にも加入し、労働者の失業時などに備えた保険制度が適用されます。
労災保険:医療法人で従業員が労働災害を被った場合に備え、労災保険への加入が義務づけられます。これは、医療法人に従事する全ての従業員に適用されます。

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・医業未収金の出資を予定していましたら、実際の社会保険報酬が出資予定額を下回ってしまいました。どうしたらよいでしょうか。

医療法人の設立において、出資金として予定していた額が実際の社会保険報酬に基づいて下回った場合、設立時の出資額が減額される可能性があります。医療法人設立に際しては、出資額が正確に反映されていることが求められます。
法人設立の認可に影響する可能性:出資額が予想よりも少なくなることで、設立時の資本不足が生じる場合、医療法人設立の認可に影響を与える可能性があります。医療法人の設立には、一定額の出資が必要とされるため、出資額が下回ると、資本要件を満たさないことになり、設立認可が下りない場合もあります。
医業未収金(診療報酬の未回収分)を出資する予定だった場合、その額が実際の社会保険報酬(診療報酬の受領額)を下回った場合、いくつかの対応策が考えられます。この場合、出資の額が変更される可能性があります。
1. 追加出資を行う
出資予定額に不足が生じた場合、追加出資を行い、所定の出資額を満たす方法です。追加出資は、法人の設立前に行うことが必要です。具体的には、設立者や出資者が追加で資金を提供し、出資額を補填します。例えば、医業未収金の予定額を下回った分を、設立者が現金や他の資産(機器、土地など)で補うことができます。
2. 出資額の再計画
出資額の見直しを行い、実際の報酬に基づいた出資額を再度計算する方法です。最初の出資額と実際の診療報酬額に差が出てしまった場合、出資計画を再度作成し直すことになります。この場合、医療法人設立の前に、出資金の額が再計算される必要があります。
3. 資産内容の変更
医業未収金以外の資産(例えば、医療機器や土地など)を出資として追加する方法です。この場合、未収金だけではなく、他の資産を活用して法人設立に必要な資本を確保することができます。
4. 設立認可の再申請
もし出資金の減少が法人設立に必要な額を下回った場合、出資額の変更を含めて再度認可申請を行うことが求められます。これには、出資額が変更されることを所轄の自治体に報告し、認可を受ける必要があります。

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・医療法人の認可が下りたら、すぐに法人医院にしてもよいのですか。

医療法人の設立認可が下りた場合、法人化を実現するためには次のような手続きや準備が求められます。
1. 法人登記の完了
医療法人の設立認可を受けた後、まず最初に行うべきは法人登記です。認可が下りた時点ではまだ法人としての法的効力が発生していないため、法人登記を行い、正式に法人が設立されたことを登記簿に反映させる必要があります。
2. 医療機関の許認可の確認
医療法人が開設する診療所や病院は、医療法人として診療所の開設に必要な許認可を得る必要があります。これは医療法人化に関係なく、運営を開始するための基本的な要件となります。例えば、医療法に基づく開設届や、医療機器の管理体制の整備、医療法に基づく診療科目の届出など、医療法人として開設する診療所や施設が適切に運営できるよう、必要な許可を得る必要があります。
3. 医療法人の税務関連手続き
法人化することで税務上の取り扱いも変わります。医療法人として運営するためには、税務署への届出や、法人税や消費税などの税務申告に関する準備が必要です。法人税の申告や、法人設立後の事業年度に基づいた消費税の課税対象など、税務署への届出を行い、法人税、所得税、消費税などの適切な処理を行う必要があります。

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・医療法人を運営していくときに必要となる手続を教えてください。

医療法人として運営していくためには、以下の定期的な手続きや管理業務が求められます。
1. 定期的な決算と税務申告
医療法人は、毎年の決算を行い、法人税や消費税、その他の税務申告を行わなければなりません。
決算報告書:会計帳簿を作成し、決算報告書をまとめ、法人税の申告を行います。税理士を雇っている場合、税理士が申告手続きを行います。
源泉徴収票:従業員に対する給与支払いがある場合、源泉徴収票を発行し、税務署に提出します。
2. 法人の登記内容の変更
法人の運営において、役員変更や事業内容の変更、住所変更などが発生した場合、登記内容の変更手続きを行う必要があります。
役員変更:理事や理事長、監事などの変更があった場合、法務局にて登記内容の変更を届け出ます。
事業所の移転:事業所が移転する場合、住所変更の登記が必要です。
3. 医療機器・施設の管理
医療法人の運営においては、医療機器や設備の管理が重要です。これに関連した手続きや維持管理が求められます。
医療機器の管理:医療機器を購入した際には、使用開始届を提出することが求められる場合があります。また、定期的なメンテナンスや検査が必要です。
施設の点検:診療所や病院の建物や設備についても定期的な点検が必要です。
4. 医療報酬の請求手続き
医療法人として診療報酬を受け取るためには、保険請求の手続きが必要です。
診療報酬請求書の提出:患者の診療内容に基づいて、診療報酬請求書を作成し、保険者(健康保険組合や国保など)に請求します。
レセプト提出:診療報酬を請求するためのレセプト(請求書)の作成や提出が求められます。
5. 法的および規制に関する手続き
医療法人には、医療法をはじめとする法令が適用されます。これに従って、以下のような手続きや管理を行うことが必要です。
医療法に基づく報告:医療法人は、医療法に基づく各種報告や届出が求められます。
診療所の開設届出:新たに診療所を開設した場合や、診療科目の追加があった場合には、医療法に基づく届け出を行う必要があります。
事業報告書の提出:毎年、医療法人の運営状況について、厚生労働省や所轄自治体に報告書を提出する場合があります。
6. 個人情報保護
患者の個人情報を取り扱うため、個人情報保護法に基づいた対応が必要です。
個人情報の管理:患者の個人情報を適切に管理し、情報漏洩や不正アクセスの防止策を講じます。
7. 労働基準法および労働安全衛生法
従業員の労働環境に関して、労働基準法や労働安全衛生法に基づく対応が求められます。
労働環境の整備:医療法人の従業員に対する労働契約書の整備や、労働条件の管理を行います。
安全衛生管理:従業員の健康や安全を確保するため、定期的な健康診断の実施などが求められます。
8. 医療法人運営に必要なその他の手続き
事務・管理業務の運営:事務職員を雇い、書類の整理、患者の受付や経理業務などを円滑に行うための管理体制を整備します。
人事・給与管理:医療法人として従業員の給与支払い、労働契約の管理、労働時間の管理を適切に行います。

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・医療法人に対する指導・監督手続は何ですか。

医療法人に対する指導・監督手続きは、医療法や関連する法令に基づき、医療法人が適正に運営されているか、またその運営が法令に従っているかを確保するために行われます。これらの手続きは、主に厚生労働省や都道府県が行うもので、医療法人の健全な運営を維持するために非常に重要です。
1. 医療法人に対する指導・監督の目的
法令遵守の確認:医療法人が法的な義務を果たしているかどうか、医療法や関連法規に基づいて指導・監督が行われます。
医療の質の確保:患者の安全を守るため、医療法人が提供する医療の質やサービスの適正を維持することが求められます。
法人運営の健全化:財務状況や経営体制に問題がないか、法的に適正な運営が行われているかを監督します。
2. 指導・監督手続きの具体的な内容
医療法人への指導・監督は、さまざまな側面において行われます。主な手続きには以下のものがあります。
監査および調査:都道府県や厚生労働省などの行政機関は、定期的または必要に応じて医療法人の監査や調査を行います。
施設の実地調査:医療機関が適切に医療サービスを提供しているか、設備や施設が法令に準拠しているかを確認するための調査です。調査内容には、診療の質、医療機器の管理、施設の安全性、衛生状態などが含まれます。
経営状況の監査:医療法人の経営が健全か、財務内容に問題がないかを監査します。これは、医療法人が財務的に安定していることを確認するためのものです。医療法人が経営難に陥っている場合、改善命令が出されることもあります。
3. 指導・助言
監督機関は、問題が発見された場合、改善を促すための指導や助言を行うことがあります。
改善指導:施設の運営に問題があったり、法令違反が見つかった場合、医療法人に対して改善指導が行われます。この指導には、医療施設の管理の見直しや、運営方法の変更を求められることが含まれます。
法令遵守の指導:医療法人が法令を遵守していない場合、指導が行われます。例えば、医療法に基づく届出の不備や、医療報酬の請求方法に関する誤りがあった場合、行政機関から指導を受けることがあります。

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