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M&A(Mergers and Acquisitions)

第二会社方式

M&A取引における第二会社方式の解説

M&Aを行うに際して、会社売却の方法としてよく第二会社方式が用いられます。第二会社方式とは、社内で収益性のある事業部門を、事業譲渡や会社分割手続を利用して、他の法人に譲渡、移転をする形で、事業の維持、再生を図る手法のことです。不採算事業や債務が残っている移転元法人については、特別清算などを用いて整理してきます。第二会社方式による分割後は、移転元法人は対価として得た分割承継法人株式をスポンサー企業への譲渡によって現金化し、それが債務弁済の原資となる、という流れになるのです。スポンサー企業側にすれば、簿外債務の承継リスクがありませんから、受け入れやすい側面があります。そして、債権者側にとっても、債権の貸し倒れによる損金算入というメリットがありますから、プラス要因となるのです。ただし、その反面、第二会社方式には、留意しなければならないポイントもあります。それは、収益性のある事業を譲り受ける代金以上の金額を出して第二会社を設立しなければならないことです。その金銭的負担が、親族や従業員からの拠出で必要となる金額を確保するのが、現実的には困難である、ということなのです。

M&A取引における第二会社方式の重要性を明らかにする

第二会社方式は、しばしばM&A取引で利用され、取引の評価や構造を戦略的に行う手法として機能します。この手法を理解することは、M&Aに関与する利害関係者が情報を得て意思決定をし、財務的な成果を最適化する上で不可欠です。

M&Aにおける第二会社方式の概要

1. 比較評価:第二会社方式は、対象企業を同じ業界の類似の上場企業と比較して評価することを含みます。この比較分析により、対象企業の業績、成長見通し、市場での位置付けなどを同業他社と比較することができます。

2. マーケットマルチプル:この手法では、対象企業と選択された比較企業の財務指標(収益、売上高、純資産など)を比較します。その後、株価収益倍率(P/E比)や企業価値売上倍率(EV/Sales比)などのマーケットマルチプルを対象企業の財務データに適用し、その価値を推定します。

3. 業界のベンチマーキング:対象企業を比較企業と比較することで、業界の一般的な評価指標やトレンドを把握することができます。これにより、対象企業の公正な評価を行い、M&A取引を適切に構造化することができます。

M&Aにおける第二会社方式の重要性

第二会社方式は、M&A取引において取引の評価や交渉を行うための構造化されたフレームワークを提供することで重要な役割を果たしています。業界の比較やマーケットマルチプルを活用することで、利害関係者は対象企業の価値を評価し、市場トレンドに沿った評価を行うことができます。

具体例と事例

第二会社方式の重要性を示すために、以下の例を考えてみましょう:

例1:テクノロジースタートアップの買収
同じ業界のスタートアップを買収するテクノロジー企業は、対象企業の公正な価値を決定するために第二会社方式を使用する場合があります。同業他社との財務パフォーマンスを比較することで、成長の可能性を評価し、市場トレンドに合致した評価を行うことができます。

例2:小売チェーンの拡大
小売業界では、店舗チェーンを買収して拡大する企業は、第二会社方式を使用して潜在的な対象を評価することがあります。類似の小売チェーンの財務指標やマーケットマルチプルを分析することで、買収対象の評価や企業ポートフォリオへの適合性について的確な判断を行うことができます。

第二会社方式は、M&A取引において対象企業を評価するための体系的なアプローチを提供し、情報を得て意思決定を行い、財務的な成果を最適化することを可能にします。業界の競争的な環境で、価値を最大化し成長を促進するために、業界の比較やマーケットマルチプルを活用して、取引を交渉することが重要です。

M&Aのスポンサーが集まりにくいデメリットを考慮

2番目に挙げられるのが、事業状態が望ましくない場合、第三者のスポンサーを募ったとしても手を上げる人がいないことです。ですから、そんな状態で新たに出資や、新規の借入を行うには、売上や利益を飛躍的に伸ばさなければならないのです。ですから、M&Aによる会社売却をしようとする会社には、かなり高いハードルとなるのは明らかなのです。そして3番目に挙げられるのは、もし新たに出資や新規借入ができなければ、再び会社の資金繰りが窮する事態に陥る可能性が高い、ということです。こういった問題点があることを、しっかり認識しておかなければなりません。それだけでなく、一部で呼称されている第二会社方式とは、本来の趣旨とは違った形で使われることがあります。第二会社を設立して、現在の事業をそのまま第二会社に移転して、負債のみを残して放置するという意図をもってなされる場合です。これは債権者の利益を著しく害するものとなります。