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M&A(Mergers and Acquisitions)

白馬の騎士

M&Aにおける白馬の騎士の神話と現実の解明

白馬の騎士は、敵対的買収を仕掛けられた企業側に立つ有力な支援者のことを言います。アーサー王伝説に出てくる英雄が由来となっており、ホワイトナイトとも言います。M&Aにおいて敵対的買収に対する買収防衛策の一つなのです。例えば、ある企業が他の企業から敵対的TOBを受けたとします。その時に友好的な企業に友好的TOBをしてもらい企業ごと会社売却を行うことにより、敵対的買収の成立を防ぐことができます。より具体的になると、敵対的TOBをかけられた時、友好的な企業である白馬の騎士が、敵対的TOBよりも高い価格でカウンターのTOBをかけます。または、TOBをかけられている企業からの第三者割当増資を引き受けることにより、その企業を買収するか合併するのです。敵対的買収によって苦しむ企業を救うイメージから白馬の騎士、と名付けられました。

伝説の解剖:M&Aにおける白馬の騎士の役割

「白馬の騎士」の概念は、合併と買収(M&A)の世界で長らくロマンチックに描かれ、苦境にある企業を救う英雄的な存在を象徴しています。本記事では、この概念の神話と現実について探求し、そのような人物がM&A取引において実際にどのような影響を及ぼし、有効性を持っているかについて検討します。

神話的な認識と現実

白馬の騎士は、しばしば先見の明のあるリーダーまたは資金力のある投資家として描かれ、財務上の困難や戦略的な課題に直面する企業を救うために登場します。しかし、現実には、そのような人物のM&A取引における役割はより微妙です。カリスマ的なリーダーや資金力のある投資家が失敗した企業を成功に導くことがある一方で、その結果は常にストレートで英雄的とは限りません。

M&A取引における白馬の騎士の影響

白馬の騎士の存在は、M&A取引において肯定的または否定的な影響を与える可能性があります。一方で、彼らの関与は、苦境にある企業に必要な資本、専門知識、および戦略的方向を注入し、その再生と成長を促す可能性があります。一方で、彼らの行動は個人的な動機や短期的な利益によって駆動される場合があり、利益相反や長期的な持続可能な価値創造の機会の逸失をもたらすことがあります。ステークホルダーは、M&A取引に関与する前に、そのような人物の動機や実績を批判的に評価することが重要です。

過去の事例と学び

過去には、M&Aにおいて白馬の騎士の役割を果たした個人や団体の注目すべき事例がありました。例えば、1980年代の企業レイダーであるカール・アイカーンやT・ブーン・ピケンズは、割安な企業を買収し、利益を上げるために再構築する積極的な戦術で名を馳せました。最近では、ネルソン・ペルツやビル・アックマンなどの活動的な投資家が、業績の悪い企業に介入し、株主価値を引き出すために経営や戦略の変更を要求することで注目されています。しかし、白馬の騎士による試みがすべて成功したわけではなく、一部は破産、株主訴訟、または規制当局の監査を引き起こす結果に終わったものもあります。

M&Aにおける白馬の騎士の概念は、ステークホルダーの想像力を捉える説得力のある物語ですが、その現実はしばしばより複雑です。カリスマ的なリーダーや影響力のある投資家が苦境にある企業を救うのに重要な役割を果たした事例はありますが、その行動や動機は慎重に検討されるべきです。過去の事例と学びを検討することで、ステークホルダーは白馬の騎士を巡るM&A取引のダイナミクスについて貴重な知識を得ることができ、より的確な意思決定を行うことができます。

白馬の騎士を見つけることは簡単ではない

通常のM&Aにおいては敵対的TOBを受けた時、白馬の騎士を見つけることは簡単ではありません。友好的な企業に会社売却をするためには、その企業を買収するための資金をすぐに確保する必要がありますが、これは資金面で余裕がある会社でなければ難しいです。それだけでなく、友好的TOBをかけて敵対的TOBを阻止するため、敵対的TOBをよりも金額を高く設定しなければなりません。そうなると、買収される企業の企業価値に対してかなり高い価格設定になってしまいますから、経営陣から見ると資金を無駄に使用することになって結果的に会社に損失を与えたということになり、株式代表訴訟を提起されるリスクが生じてしまいます。その一方で、TOBをかけられている企業が潜在的な企業価値が高く、魅力的な製品やサービス、高い利益を生み出す源泉を持っていて、他社が買収したいと思っていたがチャンスがなかった場合、敵対的TOBを機会に他社がその企業を傘下に入れたいということで、白馬の騎士を積極的に申し出ることもあります。このように、白馬の騎士と言っても多額の出費をすることになるので、それなりの意図やリターンを求めていると考えられるのです。