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M&A(Mergers and Acquisitions)
我が社は本当に売れるのか?
日本にも浸透してきたM&A
実はこのM&Aは日本で、戦前から行われていたものでした。しかし意味合い的には「救済合併」とか「対等合併」というもので、あまり積極的なイメージはなかったのです。さらに中には強引な「乗っ取り」に近いことも行われていましたね。それに対して欧米では根本からM&Aに対する考え方が違います。彼らにとって企業というのはまさに「商品」であり、買得の企業があればそれを買収するのはごく当然のことなのです。ですからそのような発想と共にM&Aは外国の市場で大きな成長を遂げてきました。
ようやく日本でも同じ考え方が持たれるようになってきたのは1980年ごろの話です。日本でのM&Aへのイメージ改善というのは、そのままM&A成立件数にも比例してきました。1998年以前には年間で1000件にも満たない国内のM&A市場でしたが、1999年にはそれが1000件を超え、2004年には2000件以上のM&Aが一年間に行われました。こうした要因としては当然、日本の企業による海外企業のM&Aやその反対のケースも見られますが、日本企業同士でも買収を行うことが普通になってきているからです。でもどうしてここまでM&Aは日本でも浸透してきたのでしょうか。
もう少し背景を探ってみると、色んな業種の規制緩和やグローバル経済の中での競争が過熱している、ことなどを挙げることができます。つまり市場がどこも成熟する中で国内のライバルだけではなく、世界の巨大な企業を相手にしなくてはいけないのです。つまりこの大競争時代を生き抜いていくためには、自分たちは持っていない経営資源をスピーディーに取り込んで、組織や事業構造を大胆に変革していくことが求められるのです。
つまり今後の起用スピードを左右し、過熱する競争を生き残れるかどうかはこうしたM&Aをどれだけ効果的に使いこなすことができるかにかかっています。皆さんの会社でもM&Aの可能性に関して検討がされているでしょうか。M&Aを行うことは、買収の対象となる企業だけではなく自分たちの会社にもかなり大きな影響とインパクトを与えることになりますのでぜひ慎重にかつ効果的に行っていきたいですね。この点でM&Aのプロからサポートを得ることもできるのです。
M&Aが急増している理由
M&Aが増えている一つ目の理由というのは「流動性の増加」ということです。M&Aを行うには当然多額の資金が必要となります。その資金の供給元として近年挙げられるのが、急激な経済成長を見せている中国などのアジア諸国や、原油を抱える産油国、そして低金利政策をとる日本であるといえます。そうした資金が高利回りを求める資金とか外貨準備の増加資金などのファンドへの流入を促進し、さらに企業買収に使われているということなのです。
もう少し具体的な数値を考えてみましょう。例えば2004年から2006年にかけてのこの流動性増加額は世界で約3兆ドルだとされています。内訳的にはアジア諸国(ほとんどが中国)の外貨準備増加額が1.2兆ドル、産油国が1.3兆ドル、日本の低金利による円キャリートレードを利用する手法が5000億ドルという方になっています。つまりこうした要因によって資金の流動性が急激に増加しているということです。こうした資金はただプールされているだけではなく、より高い運用利回りを求めてファンドなどに流れ込むことになります。
そのようにして色んな業界で企業買収が多くなり、業界再編が行われていくのです。ですから日本でもM&Aが進んでいるのはただの偶然ではなくこうした理由があることを覚えておいてください。さらに「敵対的買収の防衛」としてM&Aに取り組む企業も多くなっています。これはどういうことでしょうか。つまり他の会社を買収して企業規模を大きくすることによって敵対的買収を仕掛けられないようにするのです。これは皆さんにとって非常に理解できることなのではないでしょうか。
統合を行えば企業としての時価総額が上がり、買収するにはより沢山の資金が必要になりますので当然買収が難しくなります。まだまだこの日本では企業の時価総額というものが外国企業と比べると非常に小さい、ということができます。特に2007年には三角合併が解禁されましたので、外資が日本企業を買収しやすくなりました。ですから今から買収とか合併によって企業価値を高め、敵対的買収から自分たちを守るという危機管理を行うという判断が経営者や株主には求められるということです。