JA全中が一般社団法人化
今日は、一般社団法人に関連した最近のニュースの話題です。
少し前にTVやインターネットのニュースで取り上げられていたので、ご存じの方も多いかと思いますが、政府とJA全中(全国農業協同組合中央会)の農協改革をめぐる協議が2月9日に決着しました。JA全中の監査・指導権をなくし、2019年3月末までに現在の特別民間法人から一般社団法人に転換することが決定したのです。
そもそもJA全中とは、全国に存在する「農協」の頂点に存在する、いわば取りまとめ役です。そして特別民間法人とは、民間法人でありながら公共的な事業を行っている法人であり、特別な法律により数を限定して設立されるものです。全中の他にも日本商工会議所や自動車安全運転センターなども特別民間法人にあたります。
全中が特別民間法人から一般社団法人になると地域農協への監査権限がなくなり、全中の監査部門は新たに監査法人として再出発します。地域農協は既存の監査法人か、全中を母体とする監査法人を選べるようになります。
今回の農協改革は、今まで全中が仕切ってきた地域農業を全中の支配下から解放し、全国約700の地域農協の競争と創意工夫を促すことで、農家の収益力を向上させ、農業を成長産業に変えることを目的としています。
地域農協を束ねるJA全中の監査・指導権をなくし、一般社団法人に転換するこの改革は、1954年に始まった中央会制度をほぼ60年ぶりに見直し、地域農協の自立につながることが期待されています。
ただ、表向きの理由以外にも、TPP交渉が大詰め段階に入ったことも理由の一つではないかという意見もあります。TPPとは日本・米国を中心とした環太平洋地域による経済連携協定(EPA)の略称のことで、関税の撤廃により貿易の自由化を促進させるなどのメリットがあります。しかし、全中は今まで TPPに関して大規模な反対運動を繰り広げてきました。これが政府にとっては不都合だったのです。そのため、全中を特別民間法人から一般社団法人に転換することで支配力を弱める必要があったのかもしれません。
JA全中はもちろん、当初は農協改革に反対の構えでした。しかし、一般社団法人に転換した後も、農協法の付則に全中の役割を明記する譲歩案を政府側が示し、それを受け入れることを決めたのです。
全中側は農協改革案について、「農協の組織改編と農家所得向上はなかなかつながらないと思う。(農協法改正案を作る際には)細部にわたって検討してもらいたい」と注文をつけました。その一方で、全中が農協の間の連絡や調整業務を担う点が盛り込まれるため、地域農協への事実上の統制につながらないかという懸念もあり、どうバランスをとるのかが今後の注目点になりそうです。
安倍晋三首相は会合で、農協改革について「若者が情熱を生かすことができる農業、競争力ある農業を形成していかなければならない」と述べました。 また、「農家の所得を増やすため、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、ブランド化や海外展開を図っていけるような体制に移行する」と述べ、あらためて改革の重要性を強調し、こうした改革を含め、「強い農業と美しく活力ある農村を形成していく」と力を込めました。